第2回果樹・茶作プラットフォーム開催しました―スマート農業の加速・省力化が期待される高密植栽培とは―
2026年1月22日、第2回果樹・茶作プラットフォームが開催されました。本会議では、「りんごの省力樹形」に着目し、スマート農業技術の効果を最大化する生産方式の重要性について、活発な意見交換が行われました。当日は、りんご栽培が盛んな青森県をはじめ、長野県や北海道など各地域の農業者・農業関係者や自治体、技術開発メーカー、研究機関の皆様が一堂に会し、今後の農業発展に向けた具体的な事例を交えながら、多角的な視点から議論が進められました。
省力化の鍵を握る「高密植栽培」とは?
高密植栽培は、樹幅を狭く抑える仕立て方を基本とした栽培方法です。
樹幅が狭いため、単位面積当たりの収量を確保する目的で、結果として樹を密に配置します。樹高については、管理のしやすさとのバランスを取りつつ、収量確保の観点から一定の高さが必要とされる場合があります。
このように、高密植栽培は単に「木を密に植える」ことを目的としたものではなく、樹形を工夫することで作業性や生産性の向上を図る栽培技術として位置づけられています。
海外の先行事例では、高密植栽培による早期成園化や収量の多さが特徴として知られています。海外では降水量が少なく枝の伸長が抑えられるなど、日本とは異なる気象条件のもと、もともと樹幅の狭いコンパクトな樹形が一般的であり、こうした背景の中で高密植栽培が導入されてきました。
高密植栽培が加速させるスマート農業への道
高密植栽培によって樹形が標準化され、均一な栽培環境が実現することで、スマート農業技術との親和性が格段に高まります。
- 機械化・ロボット化の促進
均一に整えられた樹形は、自動運転トラクター、薬剤散布ドローン、自動収穫ロボットといった農業機械が、より効率的かつ高精度に作業を実行するための理想的な環境を提供します。これにより、さらなる省力化が期待されます。 - データ活用の効率化
センサーによる生育データや環境データの収集と分析は、高密植栽培で得られる均一なデータに基づいて、より高精度な分析と意思決定を可能にします。これにより、経験に頼りがちだった栽培ノウハウが「デジタルデータ」として蓄積・活用され、生産性の最大化に繋がることが期待されます。
このように、高密植栽培は、単なる栽培技術にとどまらず、農業全体の「デジタル変革」を推進し、「持続可能な農業」を実現するための重要なステップとして位置づけられています。
高密植栽培普及に向けた具体的な課題と対策
今回のプラットフォームでは、高密植栽培の普及に向けて、現場が直面する具体的な課題についても深く掘り下げられました。
- 苗木の安定供給の確保
高密植栽培に必要なフェザー苗を含むわい性台木の安定供給は、依然として課題です。需要拡大に対応できるよう、農業法人や種苗企業の生産体制強化が急務となっています。 - 圃場環境の整備
山間地など新規圃場では排水性が不十分なケースが多く、苗木の健全な生育を妨げる可能性があります。特に、従来の田んぼを転用する場合には、根本的な排水対策や土壌改良が不可欠です。 - トレリスの耐風・耐候性の向上
樹高が高くなる高密植栽培では、樹体を支えるトレリス(棚)の強度が重要です。近年の異常気象を踏まえ、台風や強風などの自然災害に対する耐性を確保した、より強固なトレリスの導入と維持管理が課題となっています。 - 機械化のさらなる進展
りんご栽培における複雑な作業の完全な機械化は、まだ発展途上の段階です。自動収穫機や摘果ロボットの開発は進められていますが、実用化と普及には、さらなる技術開発とコスト低減が求められています。 - 初期投資と経費負担の軽減
高密植栽培への転換には、苗木購入費、設備投資、トレリス強化など、相応の初期費用が発生します。特に経営規模の小さい農家や、後継者不足に悩む生産者にとっては、投資への経済的負担が導入へのハードルとなることがあります。 - 「美味しくない」という風評への対応
「高密植栽培のりんごは品質が劣る」「美味しくない」といった誤解や風評が一部に存在し、これが消費者や生産者の導入意欲に影響を与える可能性が指摘されました。適切な管理下で栽培されたものであれば、高密植栽培であっても優れた品質や味を有しています。この風評を払拭するためには、科学的根拠に基づく正確な情報発信と、成功事例の積極的な共有が不可欠です。
まとめ
今回は、りんごの高密植栽培等について、各地の取組や課題を情報共有し、生産性の向上に向けて樹形を工夫する重要性を確認しました。また、果樹のスマート農業技術の開発状況の最前線を知ることで、農業者にとって将来の農作業の省力化への期待も生まれたのではないでしょうか。
今回のプラットフォームの開催によって、先進的に省力樹形に取り組む地域の事例から自身の取組の見直しや、技術開発の最新状況から、将来、スマート農業技術を活用して、更なる生産性の向上につながるきっかけとなることを期待します。
今後、果樹・茶作プラットフォームでは、りんごの高密植栽培における課題の深堀、国外の事例収集等にも取り組んで参ります。
その他、議論された内容の詳細や講演資料についてはこちらをご覧ください。
- IPCSA第2回果樹・茶作プラットフォーム会議概要
- 「青森りんご総合戦略について~スマート農業を中心に~」青森県
- 「長野県の高密植栽培について」JA全農長野
- 「ヤンマーの無人技術・自動運転技術」ヤンマーホールディングス
- 「リンゴの樹形とスマート農業」農研機構
※IPCSAプラットフォームでは、今後もこうした対話の場を通じて、皆様に新たな気づきや成長のきっかけを提供できる活動を展開し、スマート農業技術の活用促進に寄与していきます。
【関連記事】
・第1回開催レポート:「第1回果樹・茶作プラットフォーム開催しました」
・その他、営農類型のプラットフォーム開催レポート
/report/tags/platform.html