2月のスマ農トピック②ー現場から動かすスマート農業──AGRISTの官民協働モデルー
宮崎県新富町を拠点とするAGRIST株式会社が、「食と農をつなぐアワード2025」の「スマート農業技術等の開発・普及部門」で農林水産大臣賞を受賞しました。ポイントは、生産者・開発者・自治体が一体となってロボット開発から運用、改善まで進める"官民協働型"の開発モデル。そこで本コラムでは、受賞背景や今後の展望について、AGRIST秦代表取締役にインタビューした模様をお届けいたします!

AGRIST株式会社とは?
「収穫の人手不足」という現場課題を起点に、AIとロボティクスを活用した自動収穫ロボットや営農支援などのテクノロジーで農業課題を解決し、100年先も続く持続可能な農業を実現する宮崎県発のスタートアップ企業です。
食と農をつなぐアワード2025とは?
令和6年改正の「食料・農業・農村基本法」等を踏まえ、食料システムの理解促進と持続的供給に向けた主体的取組の促進を目的とする表彰制度のことです。4つの部門が設置され、そのうち「スマート農業技術等の開発・普及」部門でAGRISTは農林水産大臣賞を受賞しました。
Q.どのような活動が評価され受賞につながったとお考えですか。
A.私たちは現場での日々の運用を前提にした協働体制づくりを重視してきました。
生産者の皆さまには日々のロボット運用や課題の可視化を担っていただき、AGRISTはそれらのデータに基づく技術改良と現場伴走を担当、宮崎県農政水産部は合意形成や地域連携を受け持つなど、三者が役割分担をしながら密に連携してきました。
現場の気づきや課題を丁寧に吸い上げ、改善に素早くつなげる循環を生み出せたことが、今回の受賞につながったのではないかと感じています。


Q."協働体制"の構築によって得られた成果について教えてください。
A.現場の運用から課題を抽出し、収集データをもとに技術改良と生産方式の見直しを並行して進めることで、ロボットの性能向上と収穫しやすい生産方式の特定を同時に進めることができました。また、省力化や収量増加に加えて、ロボットが収集する画像・生育データが、病害虫の早期把握や圃場状況の可視化に活用され、栽培判断の精度向上にもつながっています。
このプロセスを積み重ねた結果、生産者が主体となってロボット運用を進める文化が生まれ、日々の判断にもデータ活用が自然と組み込まれるようになるなど、生産現場の変化を強く感じています。このモデルを宮崎県から、全国へ展開していきたいと考えております。


Q.地域の生産者との連携に取り組む中で、苦労した点やそこから得た学びを教えてください。
A.創業当初は、収穫ロボットに適した仕立て方や品種が確立しておらず、ロボットの収穫精度と現場の期待値にギャップがありました。この生産側と開発側のギャップは、多くの現場で共通する課題かもしれません。
宮崎県やJAの協力のもと、仕立て方や品種を変えながら実証を重ね、生産者の皆様との対話深めていく中で、ロボットに適した生産方式の取組が広がっていきました。精度を上げるための技術改良はもちろん重要ですが、それと同じくらい重要なのが生産方式を工夫してもらうことです。この生産側と開発側の"双方が歩み寄る姿勢"を今後も大切にしていきたいと考えております。


Q.今後の展望についてお聞かせください。
A.農林水産省中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金)の枠組みのもと、常総市に大規模実証農場「AGRIST常総農場」を2025年11月に新設しました。AGRISTのロボットが単なる「作業の代替」に留まらず、「データ収集の司令塔」として機能し、様々なデータを収集・活用することで農業課題の一つである「収益の不安定さ」を解決していきたいと考えています。
また、2026年3月から米国シリコンバレーの「Japan Innovation Campus」に入居することが決まりました。現地での市場調査や関係者との対話を通じて得られた学びを日本の現場に還元し、AGRISTのディープテックと現場の両輪で社会実装をさらに進めていきます。

最後にメッセージをお願いいたします。
技術は、現場で動き続けてこそ価値があります。今回のプロジェクトでは、生産者の皆さま自らがロボットを操作し、日々の運用から改善点をあぶりだすという「現場実装」を行いました。スマート農業は、技術だけでは完成しません。それを受け入れ、共に歩んでくださる生産者、自治体、パートナーの皆さまとの「協働」があって初めて、真に役立つ仕組みとなります。
現場のデータに基づく改善を重ね、働き手の負担を減らし、収量と品質を守る。日本で磨いたモデルを世界へ。シリコンバレーでも挑戦を続け、100年先も続く農業の実現に一歩ずつ近づいていきます。
