化学除草と手作業除草の間を埋める ―オランダ発・自律型除草ロボット「Odd.Bot」が描く持続可能な農業―
第2回IPCSA総会の基調講演では、オランダのスタートアップ企業Odd.Botへのインタビューをもとに制作した動画を上映し、自律型除草ロボットの取り組みを紹介しました。作物を傷つけずに株間の雑草だけを除去するこのロボットは、人手不足や化学除草剤の削減といった、いま農業が直面する課題に対する新たな選択肢として注目されています。
インタビューでは、ロボットの性能だけでなく、どのような課題意識から生まれ、誰と連携しながら開発されてきたか語られました。本コラムでは、総会でご紹介した内容をもとにOdd.Botの取り組みをご紹介します。
Odd.Botには、どのような特徴や強みがあるのでしょうか
私たちの大きな優位性の一つは、かなり手頃な価格であるため、幅広い農業者に導入していただきやすい点です。使い方も非常に簡単です。リモコンで圃場まで走らせて、サブフレームを適切な高さに設定し、稼働させます。また、ロボットが非常に軽量であることも大きな特徴で、重い機械のように土壌を締め固めにくいという利点があります。

実際に導入すると、どの程度の効果があるのでしょうか
初期段階で使えば、精度は最大98%まで上がります。ただ、作物と雑草が大きくなり絡み合うと、アルゴリズムが雑草と作物を見分けるのは難しくなります。全体として見ると、除草にかかる時間を最大80%削減し、それに伴ってコストも削減できています。除草時間の削減率は、圃場や雑草の状況、作物によって変わります。
Odd.Botはどのような課題意識から生まれたのでしょうか
私たちが取り組む背景には、大きく二つの課題意識があります。
一つは、除草作業における手作業への依存を減らしたいということです。もう一つは、投入資材や化学薬剤を減らして、より持続可能な農業へ向かっていくことです。
私たちのミッションは、持続可能な農業への移行を加速することにあります。そのために、化学除草と手作業除草に代わる選択肢を提供しています。
どのような体制で開発を進めてきたのでしょうか
私たちは、かなり早い段階から農業者と協力してきました。アーリーアダプター・プログラムを「Trailblazer Program」と名付けて、農業者と一緒に取り組み、農業者がどのようにロボットを操作するのかも観察することで、できるだけ簡単で、アクセスしやすく、使いやすい製品に改良してきました。
例えば、現在は地図表示を提供しており、ロボットがどこを走っているか、作業が終わりそうかを確認できます。また、「もうすぐバッテリーが空になります」「圃場のこちら側で待ちますか、それとも反対側で待ちますか」と、ロボットが農家にプッシュ通知を送ることもあります。このように、ロボットと農家のやり取りはますます増えています。
また、ワーゲニンゲン大学・研究機構(Wageningen University & Research)やクボタとも連携してきました。ワーゲニンゲン大学は2週間ごとに新しい作物の種まきを手伝ってくれたので、常にあらゆる生育段階の作物がある状態をつくることができました。そのおかげで、さまざまな圃場条件のもとでデータを集め、ロボットを試験することができたのです。

日本に向けたメッセージはありますか
ロボットの導入という点では、公共空間でのロボットも含め、日本はかなり先を進んでいると思います。日本の人々、あるいは国全体が直面している高齢化問題は、オランダでも同様に社会課題となっています。高齢化社会における対応については、日本から学ぶべきだと考えます。また、我々としては、ロボット導入や人とロボットの関わりをどう進めるか、刺激を受けています。
総評
今回のOdd.Botの事例で特に印象的だったのは、ロボットそのものの性能だけではありません。開発初期から農業者やワーヘニンゲン大学が参画し、多様な作物や圃場条件で試験を重ねながら改良を続けてきた点です。
スマート農業技術の開発では、優れたアイデアや要素技術だけでなく、それらを実際の現場で検証し、利用者の声を取り込みながら改良を重ねるための「実証の場」が欠かせません。Odd.Botの成長の背景には、農業者や研究機関との密接な連携と、継続的な試験を可能にする環境がありました。
こうした産学官連携による技術開発は、日本においてもますます重要になっています。農研機構では、企業や大学、研究機関等による研究開発や実証を支援するため、スマート農業関連施設をはじめとする各種研究施設・設備の供用を進めています。自律走行技術やロボット技術、センシング技術などの開発・実証に活用できる環境を提供しており、新たな技術の社会実装を後押ししています。
海外の先進事例を見ると、革新的な技術の裏側には、それを支える連携の仕組みや実証環境の存在があります。日本でも、研究機関、企業、農業者がそれぞれの強みを持ち寄り、新しい技術を育てていく取組が求められています。
農研機構のスマート農業研究関連施設の供用については以下をご覧ください。
IPCSAでは今後も、国内外の先進的な技術やその社会実装の取り組みを取り上げながら、スマート農業の普及や現場課題の解決につながる情報を発信していきます。
*今後会員限定で動画は公開予定です。準備が整いましたら会員メルマガでお知らせします。動画内では、Odd.botの動作や、どのようにして作物を傷付けずに雑草を取り除いているか等、本コラム内では紹介しきれていない詳細もご覧いただける予定です。