ドローンとAIで"収量以外"の強さをまるごと定量化!―新技術を混植栽培に適用し、多面的な効果を実証―
農業の栽培試験では、これまで「収量」が最も重視される評価項目でした。しかし、これからの農業に本当に必要なのは、平均収量を向上するだけでなく、土地ムラや年変動を少なくする、雑草に負けない、倒伏(茎が倒れてしまうこと)に強いといった、多面的な強さです。ところが、こうした複数のことを人力で調査しようとすると膨大な手間がかかり、これまでの栽培試験では十分に検証されてきませんでした。今回ご紹介するのは、この"見えにくかった多面的な効果"を、ドローンとAIを使ってまるごと定量化する技術を新たに開発した、千葉大学・農研機構・東京大学の研究グループの成果です。
本コラムでは、本研究グループの一員である千葉大学大学院園芸学研究院 作物学研究室の深野先生にその内容をご紹介いただきます。
なぜ「収量以外」の効果は測れなかったのか
収量のばらつき(畑の中の土地ムラ)、雑草への強さ、倒伏への強さ――これらは農業経営において収量と同じくらい重要な指標です。しかし、畑全体を隅々まで歩いて目視で評価するのは非常に手間がかかり、調べる栽培方法の数が増えるほど、人力での調査は現実的ではなくなります。そのため、これまでの研究の多くは収量の平均値だけで栽培方法の優劣を判断せざるを得ず、多面的な強さを見落としてきた可能性がありました。
ドローン空撮×AIで、多面的な効果をまるごと定量化する新技術
研究グループが新たに開発したのは、栽培期間中に2~3週間に一度ドローンで畑を空撮するだけで、栽培終了後にAI画像解析によって、収量・収量のばらつき・雑草の繁茂量・倒伏の程度といった複数の栽培特性を同時に、かつ定量的に評価できる技術です。従来のように現地調査の項目をひとつひとつ増やすのではなく、上空からのデータを解析することで、多面的な効果を効率よく"まるごと"捉えられる点が大きな特徴です。

この技術を「混植」に適用し、効果を実証
研究グループは、開発した技術の実用性を確かめるため、複数の品種・作物を組み合わせて栽培する「混植(こんしょく)」を題材に検証を行いました。混植は、単一栽培に比べて収量の安定性や環境への強さを高めると期待されながらも、その効果が十分に定量化されてこなかった栽培方法です。飼料・緑肥として利用されるムギ類(エンバク、ライムギ、オオムギ)を用いた栽培試験に、新しく開発した評価技術を適用した結果、次のことが明らかになりました。
- 混植栽培は、単一品種の栽培に比べて平均収量を向上させるだけでなく、畑の中での収量のばらつき(土地ムラ)を減らす効果があった
- 混植栽培は、雑草への耐性も高める傾向が見られた
- 一方で、一部の混色栽培が倒伏への耐性がやや低いという結果も得られた
これらの効果は、いずれも人力調査だけでは十分に定量化することが難しかった項目です。今回、新しい評価技術を用いたことで、混植のメリット・トレードオフを初めて具体的な数値として示すことができました。

現場への広がりに期待
今回開発された技術のポイントは、混植専用の手法ではなく、栽培方法全般の多面的な効果を評価できる汎用的な枠組みである点です。緑肥や堆肥、微生物資材の活用など、昨今注目されるさまざまな持続的農法の効果検証への応用も可能です。スマート農業技術は、農家のためにだけあるわけではありません。我々研究者こそ、スマート技術を使って農業研究そのものをもっと効率化・高精度化する必要があるかもしれません。本研究成果は、2026年4月10日に学術誌「Precision Agriculture」に掲載されました。
(出典:千葉大学ニュースリリース「『収量』だけじゃない 様々な栽培特性を空から測る新たな枠組み―混植栽培の生産性・安定性・倒伏/雑草耐性を同時に評価―」)