圃場の凹凸を見える化し、排水対策での有効活用
作業の効率化には複数の小区画圃場を一つにまとめる合筆が一つの選択肢として挙げられ、中山間地域では合筆によって緩やかな傾斜を持つ大区画圃場が見られるようになってきています。こうした合筆圃場の内、十分な均平化が行われない場合には合筆前の小区画圃場の畦畔などに由来する凹凸が圃場内に残ることがあります。
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の東北農業研究センターでは、こうした圃場内のわずかな窪地がダイズの初期生育を低下させることを、ドローンによる生育調査と地形解析によって明らかにしました。さらに、トラクターなどに搭載されているRTK-GNSSの位置情報から圃場の高低差を簡便に解析・表示するプログラムを開発しました。これらの成果を組み合わせることで、合筆圃場のどこに排水上の問題があるのかを把握し、明渠や暗渠などの排水対策を重点的に実施するための情報として活用が期待されます。
研究の背景
農業従事者の減少が進む中、農作業の労働生産性を高めるためには、圃場の大区画化が有効な手段の一つです。しかし、中山間地域では隣り合う圃場間に高低差があるため、合筆によって緩やかな傾斜を持つ大区画圃場が造成されることがあります。こうした圃場で十分な均平化が行われない場合、圃場内に深さが数センチメートルの窪地が残る場合があります。例えば、図1に示す圃場は7枚の小区画圃場(図1A)を合筆し、約0.7 haの圃場(図1B)としたものです。この合筆圃場には多数の窪地が存在していました(図1C)。こうした窪地には降雨後の水が集中しやすく、畑作物が湿害被害に合う可能性があります。
一方、従来の生育調査だけでは大区画圃場のどこに生育不良が発生し、それが地形とどのように関係しているかを詳細に調べるためには多大な労力が必要でした。そこで、ドローンによる生育センシングと地形情報を組み合わせ、圃場内の窪地とダイズ生育との関係を解析しました。また、トラクターによる即位情報から圃場の地形と窪地の分布を解析し、表示させるプログラムを開発しました。

図1 合筆前後の圃場の空撮画像と窪地の解析画像
Aが合筆前の、Bが合筆後の空撮画像を、Cが窪地を解析した画像を示しています。Cでは青色が濃いほど窪地が深いことを示しています。合筆前の画像は国土地理院の空撮画像から引用しています。
研究成果のポイント
1.深さ数センチメートルの窪地でもダイズの初期生育が低下
ドローンから撮影した画像の解析からダイズの被覆率を求め、圃場の地形と比較したところ、窪地が深い場所ほど播種後のダイズ生育が低下する傾向が確認されました。調査した全ての合筆圃場で、深さ2 cm以上の窪地が存在し、窪地が深いほど被覆率の生長量が小さかったことが示されました。こうした窪地では周囲の水が集まりやすく、湿害によって生育が低下していたと考えられます。また、窪地の近くに暗渠がある場合には生育改善が確認され、特に深い窪地の周辺に暗渠を配置することで湿害被害を大きく軽減させる効果が示唆されました。これらの結果から、大区画化した圃場では圃場全体の排水性だけでなく、圃場内部に存在する局所的な窪地を把握することが重要と考えられます。
2.トラクターのGNSS情報から圃場の凹凸を「見える化」
圃場内の窪地の分布を把握するため、トラクターのガイダンスや自動操舵などで利用されているRTK-GNSSの高精度な位置情報から、圃場内の高低差を解析し、窪地マップとして表示するWindows向けプログラムを開発しました。このプログラムでの解析例を図2に示しますが、図2Aの軌跡データから、圃場の高低差から窪地の分布までを解析できたことを示します(図2B、C)。圃場の地形を通常の農作業時に取得される走行軌跡(図2A)を活用できるため、専用に測量作業を行うことなく、圃場内の微地形を把握することができます。このプログラムは職務作成プログラム「農作業ログの自動解析・凹凸分布表示プログラム」として農研機構に登録されています。



図2 トラクターの軌跡、解析した高低差と窪地の分布を示す。
図中のAはトラクタの走行軌跡を、Bは軌跡データからから解析された高低差を、Cは窪地の圃場内での分布をそれぞれ示す。Bの高低差マップでは色が赤いほど標高が高いことを示し、Cの窪地は青色が濃いほど窪地が深いことを示す。
今後の展望
圃場の大区画化は農作業の効率化に有効ですが、単に圃場を大きくするだけでは、圃場内に残された窪地が作物の生育を低下させる原因となる可能性があります。私達の成果を活用すれば、トラクターのGNSS情報から圃場内の窪地を把握し、生育不良が生じやすい場所を予測することが可能になります。今後、地形解析の手法を発展させることで、明渠や暗渠の施工位置などの検討を可能にし、排水対策を有効的に実施するための技術をさらに開発できるものと思われます。これにより、大区画圃場での省力的、かつ生産性の高い圃場管理につながることが期待されます。
論文情報
タイトル:Effects of depressions and drainage systems on soybean (Glycine max (L.) Merill) growth during the early growth stages under excess water stress conditions
著者:Rintaro Kondo, Soshi Tanaka, Kazuhiko Fujisao, Hirotake Miyaji
雑誌名:Plant Production Science
DOI:10.1080/1343943X.2024.2404462
関連する知財
職務作成プログラム:「農作業ログの自動解析・凹凸分布表示プログラム」
登録番号:機構-L19