-スマート農業で変わる!これからのカンキツ栽培- イベントレポート
農研機構では、栽培体系の転換とスマート農業技術の導入をセットで行う農業者を都道府県等と協力して支援し、そのモデル的な営農を全国に横展開していく取り組みを実施しています。
本コラムでは、スマート農業技術の導入に取り組む株式会社日下農園(以下、日下農園)で開催した現地実演会の様子をお届けします。
開催の背景
他品目と同様に、カンキツにおいても収穫物や資材の運搬、防除、除草といった作業負担の軽減は大きな課題となっています。カンキツは特に傾斜の強い園地が多いことから、作業効率と安全性の向上が求められてきました。本現地実演会を開催した日下農園でも傾斜の大きな園地が広がっていますが、テラス式に整備して樹列を整え、園内道も確保することで機械の導入効果を高めることができています。
●日下農園公式サイト:Kusaka Farm Shop
●スマート農業技術活用促進法に基づく生産方式革新実施計画の認定について:関東農政局
スマート農業機械の実演の様子
参加者は、日下農園の園地内でスマート農業機械の実演を見学しました。
★ロボット草刈機(和同産業株式会社 KRONOS)
設置したエリアワイヤー内をランダムに走行する電動の無人草刈機です。最大30~40aの面積を管理することができ、バッテリー残量が少なくなると自動で充電ステーションへ戻り、充電後は草刈りを再開します。実演した斜度約10度のほ場では均一に草が刈られ、また、走行時の踏圧により背丈の高い雑草の成長を抑制する効果も見られました。

★ドローン(東海スカイテック株式会社)
自動航行の無人航空機での散布にあたっては、事前に園地の測量が必要です。測量用のドローンを使用すると、日下農園の約10haの園地の撮影は約5分で完了しました。撮影した写真をもとにした3Dマップは、約20分で作成されます。3Dマップ上で散布対象範囲や散布ルートを調整しておくことで、20aの区画への散布を約2分で完了しました。


★ラジコン草刈機(株式会社ユニック)
遠隔操作ができる、電動のラジコン草刈機です。傾斜地や不整地でも安定して走行し、効率的な除草作業が可能です。実演では、カンキツ園地内の斜面を力強く走行しながら背の高い草まで刈り取る様子が披露されました。参加者からは、実際の作業時間や傾斜地での運用、バッテリーの稼働時間に関する質問が寄せられました。


★追従運搬車(株式会社城南製作所)
前方の作業者を検知し、その後方を自動で追従走行する電動の運搬車です。収穫コンテナや肥料、農薬などを積載して園地内を移動できるため、重量物の運搬に伴う作業負担の軽減が期待されます。実演では、作業者が立ち止まる際に手元まで近づく様子が紹介され、傾斜のある園地内でも安定的に走行していました。参加者からは、実際に園地内で運搬する際の作業導線等に関する質問が寄せられました。


勉強会での情報提供
静岡県では経営体当たりのカンキツ栽培面積が年々拡大しており、スピードスプレーヤーの走行が難しい傾斜地を中心に無人航空機を活用した防除が有力な選択肢の一つとして注目されています。特にドローンは個人や生産者グループ単位での導入も検討しやすく、無人ヘリコプターに比べて導入のハードルが低いことが利点として挙げられます。一方で、ドローンによる農薬散布は課題も多く、静岡県農林技術研究所果樹研究センターでの解決に向けた実証研究について情報提供されました。
【課題1】濃厚少量散布ができる農薬の登録拡大、新規剤の開発
ドローンによる農薬散布を行うためには、対象農薬が濃厚少量散布に対応した登録を受けている必要があります。しかし、カンキツで利用できる殺菌剤や殺虫剤は依然として限られており、関係機関が連携してドローン散布に対応した農薬登録の拡大に取り組むことの重要性が示されました。
【課題2】防除効果の安定化と散布効率の向上
ドローン防除では、飛行経路や飛行高度、飛行速度、散布粒径、散布水量などの条件によって薬液の付着性が変化します。静岡県ではこれらの要素について検証を行い、防除効果の向上と効率的な作業の両立を目指しています。実証の結果、平坦地では樹列上を飛行し、100μm程度の比較的細かな粒径で散布することが、薬液付着性や散布効率を考慮した現実的な運用方法であることが確認されました。また、樹形についても、従来の開心自然形より双幹形の方が薬液の付着性が高い傾向が示されており、ドローン防除の効果を高めるためには、飛行条件だけでなく園地条件や樹形を含めた検討が重要であることが紹介されました。
【課題3】経営に適した導入・運用方法の検討
ドローンの運用では、農業者個人や農業者グループで購入したり、サービス事業体に委託したりする方法が考えられます。ドローンを購入する際は、機体やバッテリー等の周辺機器の購入、操縦ライセンスの取得等を含めた初期費用のほか、点検や賠償責任保険、果樹園で安全に自動飛行を行うためのRTK位置情報補正サービス等の維持費を検討する必要があります。
地域ごとに栽培面積や防除回数、機体の処理能力を踏まえて運用モデルを検討し、経営面も含めた導入条件の整理を進めることで、生産者が自らの経営に適した活用方法を検討しやすい環境づくりの重要性が示されました。
また、静岡県西部農林事務所と関東農政局からはスマート農業技術の導入に使用できる補助事業等についても紹介されました。
おわりに
本実演会には生産者の方を中心に49名が参加され、傾斜の強い果樹園でも使用できるスマート農業技術への関心の高さが改めてうかがわれました。実際に園地を見て学び、参加者同士で意見交換をする機会は、各技術のメリットや課題を正確に把握するうえで非常に重要です。果樹栽培の労働生産性が課題に挙げられる中、本実演会が今後の技術導入や産地の発展に向けた一助となることが期待されます。
参考
●令和8(2026)年度「カンキツ栽培におけるスマート農業の導入に関する現地実演会 ~スマート農業で変わる!これからのカンキツ栽培~」(2026年9月開催) | 農研機構
●出展者情報
・株式会社城南製作所
・東海スカイテック株式会社
・株式会社ユニック
・和同産業株式会社