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8月のスマ農トピック①―見て学ぶ!リンゴ・ナシ栽培の省力化最前線― イベントレポート

農研機構では、栽培体系の転換とスマート農業技術の導入をセットで行う農業者を都道府県等と協力して支援し、そのモデル的な営農を全国に横展開していく取り組みを実施しています。 

本コラムでは、国内有数の省力樹形園地を有するJRフルーツパーク仙台あらはま(運営:仙台ターミナルビル株式会社)で開催した現地実演会の様子をお届けします。 

JRフルーツパーク仙台あらはまについて 

JRフルーツパーク仙台あらはまは、一年を通して果物狩りを体験できる観光農園です。 

園内では、約8.5haの土地で野菜や果物を栽培しており、イチゴハウスでは環境制御システムによる栽培管理、ナシやリンゴ、イチジクではジョイント仕立とY字樹形による栽培管理、スマート農業実証プロジェクトへの参画など、新しい農業技術取り入れ実証しています。 

2027年度には敷地面積を約21haに、栽培品目を11品目に拡大することを計画しています。 

ジョイントV字トレリス樹形とは?

果樹栽培においては、機械化が困難な剪定や摘果等、経験や高度な判断を要する作業が多いことから労働生産性の低さが課題となっています。このため、省力樹形の導入により作業動線を直線化して機械化を進めたり、果樹栽培未経験者でも剪定や摘果等の作業が可能となるよう単純化したりすることが、労働生産性の向上や経営規模の拡大に繋がると期待されています。 

★ジョイントV字トレリス樹形の特徴
ジョイントV字トレリス樹形は、主枝を隣接樹と連結しながら、側枝をV字状の棚に沿って配置する樹形のことです。二ホンナシで開発が進み、リンゴやイチジクにも応用が進んでいます。メリットは主に3つです。 

  1. 早期多収 
    定植3年目で、慣行樹形の着果開始5年目と同等の収量が見込めます。 
  2. 省力化 
    作業動線が一直線になり、脚立の移動やスピードスプレーヤ・草刈機の走行等すべてが直線にできます。また、側枝の間隔を40cm前後で配置していることで、薬剤散布の効率化も示されています。 
  3. 管理の簡易性
    側枝配置が単純で、摘果基準も設定しやすく、剪定もパターン化できることから、慣行栽培と比較して果樹栽培未経験者でも管理が容易です。JRフルーツパーク仙台あらはまはスタッフ30名のうち、障害者雇用が4名、熟練者は6名のみですが、収量・品質ともに高い水準を維持しています。 


メリットが多い一方で、課題もあります。 

  1. 施設の設置にコストがかかる 
    棚を構築するための資材や施工には、10aあたり350万円程度かかります。講演会では東北農政局から補助事業ついて情報提供があり、施設整備に使用できる事業についても紹介されました。 
  2. 導入できるスマート農業技術の少なさ 
    ジョイントV字トレリス樹形をはじめとする省力樹形栽培は、普及が進みつつあるもののまだ十分ではないことから、果樹作で使用できるスマート農業技術の開発・普及も他作目と比べると進んでいません。一方で、例えば高所作業台車等は海外メーカーの農機は日本で使用するには大きすぎることもあり、国内メーカーによる開発が期待されている状況です。

実演会では、リンゴ、ナシの省力樹形栽培を行っている6年生園地(JRフルーツパーク仙台あらはま内)と10年生園地(せんだい農業園芸センター内)を見学し、仙台ターミナルビル㈱の菊地秀喜専門監と柴田健一郎専門監から、樹形の特徴や、定植、剪定、摘果、収穫といった管理作業のポイントが説明されました。また、収量や設置コストについても具体的に数値で比較されました。 

仙台ターミナルビル㈱・菊地専門監による解説の様子
仙台ターミナルビル㈱・柴田専門監による解説の様子

園内でのスマート農業機械の実演 

参加者は、リンゴ、ナシの省力樹形栽培園地内でスマート農業機械の実演も見学しました。 

★ロボット草刈機(和同産業株式会社「KRONOS」) 
設置したエリアワイヤー内をランダムに走行する電動の無人草刈機です。1台で最大30~40 aの面積を管理することができ、バッテリー残量が少なくなると自動で充電ステーションへ戻り、充電後は草刈りを再開します。10 日間走行した区画(写真手前)では草が細かく刻まれ、集草も不要でした。 

★追従/自動運搬台車(輝翠株式会社「Adam」) 
人を認識して後ろをついてくる追従モードや、指定した経路の自動走行、地点間を自動往復する機能を備えた多目的運搬台車です。凹凸や傾斜のある果樹園でも走行でき、最大300kgまで積載が可能です。収穫物や剪定枝、肥料などの運搬に役立ちます。参加者からは、草刈りや防除関連のアタッチメントに関する要望も上がっていました。 

★クラウド対応灌水コントローラー(ネタフィムジャパン株式会社「GrowSphere」) 
電磁弁やセンサーと連携することで、灌水・施肥を自動化できるシステムです。ドリップ灌水を採用しており、他の灌水手法よりも根にストレスを与えず、効率良く灌水できます。タイマーで灌水が行われるシンプルなシステムから、日射センサーと連携して自動で灌水量を調節するシステムまで、自身のほ場の規模や目的に合うものを選択することが可能です。

種苗企業のブース展示 

省力樹形栽培の導入に当たっては、台木・苗木の選定も重要です。地力や排水性等のほ場の特性に応じた選択に関する講演と合わせて、種苗企業によるブース展示も実施されました。また、トールスピンドルシステムや新わい化栽培で必須となるわい性台木は数量の確保が難しく、苗供給に依然として課題があります。ブースでは、生産者が台木の注文を付けられるような形を望む声も寄せられました。 

おわりに 

本実演会には生産者の方を中心に97名が参加され、省力樹形栽培と果樹作で使用できるスマート農業技術への関心の高さが改めてうかがわれました。実際に園地を見て学び、参加者同士で意見交換をする機会は、各技術のメリットや課題を正確に把握するうえで非常に重要です。果樹栽培の労働生産性が課題に挙げられる中、本実演会が今後の技術導入や産地の発展に向けた一助となることが期待されます。 


参考


●出展者情報