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【生産】認定事例vol.21 ―「若手も活躍できる営農組合」へ。組織の合意形成から地域の優良モデルとなるまでの軌跡―

生産方式革新実施計画の認定事例(農事組合法人江波東(よなみひがし)営農組合(富山県砺波市))

富山県砺波市で水稲、大麦、大豆を生産する農事組合法人江波東営農組合は、栽培管理システムや直進アシスト装置、農業用ドローンなどを活用し、作業の効率化とデータに基づく栽培管理に取り組んでいます。同組合が目指すのは、機械やシステムを導入するだけでなく、若手世代や農作業の経験が浅い人も参加しやすい環境を整え、地域の農地と営農組織を次の世代へ引き継ぐことです。
本記事では、地域農業の将来に対する危機感から計画認定に踏み出した経緯と、スマート農業技術を組織の継続につなげる取組を紹介します。
★生産方式革新実施計画の詳細については、3月のスマ農トピック②をご参照ください。

写真:農事組合法人江波東営農組合の皆様(認定式の様子)

Q1.生産方式革新実施計画の認定を受けようとしたきっかけを教えてください

当組合は24戸で構成されていますが、組合員の高齢化に伴って農作業に従事する人数が年々減少し、水管理や草刈り、追肥や防除などの共同作業が一部の組合員に集中するようになっていました。また、新たな担い手の確保も難しく、このままでは将来的な営農継続が難しくなるのではないかという強い危機感を抱いていました。

こうした中、組合の総会や役員会で将来の営農体制について話し合いを重ねる中で、省力化技術の導入や作業負担の軽減を求める声が次第に大きくなりました。そのため、高齢化や担い手不足への対応策としてスマート農業を進めていくことを組合全体の方針として共有し、組合の将来ビジョンである「15年後に向けた営農組合の展開方向」においても、スマート農業を重要な取組として位置付けました。

そのような中で、県や農政局の紹介でスマート農業技術活用促進法に基づく計画認定制度を知り、組合の将来ビジョンの実現をより効果的に進めるため、認定を受けることにしました。

認定申請に当たっては、県やJAなどの関係機関での勤務経験があり、農業施策に詳しい組合員や、パソコンや農業機械の操作に長けた組合員が中心となって計画づくりを進めました。その過程では、認定制度の概要や期待される効果、組合の将来ビジョンとの整合性について話し合うとともに、スマート農業を進める必要性や認定取得のメリットについて組合員同士で意見交換を行い、理解を深めながら合意形成を図りました。

また、計画作成に当たっては、スマート農業技術の導入によってどの程度労働時間や生産コストが削減できるのかを、グラフやデータを使って分かりやすく示しました。その結果、組合員の理解が深まり、組合の将来像や営農体制の維持・発展に向けて、組織全体で前向きに取り組んでいこうという機運が高まりました。

Q2.スマート農業技術を導入・活用する中で、苦労したことや工夫したことを教えてください

令和元年にドローンを導入したときは、「導入費用に見合う効果が本当にあるのか」「機械操作は難しくないのか」「オペレーターを確保できるのか」など、組合員から不安や懸念の声がありました。

そこで、先進地視察や導入事例の紹介を行いながら理解を深めてもらうとともに、実際に運用する中で農薬散布の効率化や農薬費・労働時間の削減といった効果を確認することができました。こうした成果が見えてきたことで、省力化や作業効率化のメリットを組合員が実感するようになり、翌年度には「もう1台導入してはどうか」という声も上がりました。その結果、ドローンを追加導入するなど、スマート農業に対する理解は着実に深まっていきました。

また、ドローンや自動操舵システムを導入した当初は、設定や操作方法の違いに戸惑う組合員もいましたが、実際に使い続ける中で徐々に慣れ、省力化や作業精度の向上といった効果を実感できるようになりました。
さらに、新しい機械や技術を導入する際には、勉強会を開催するほか、LINE(ライン)を活用して作業計画や注意事項などの情報共有を行い、組合員が安心してスマート農業技術を活用できるよう努めています。

スマート農業技術を導入する上で大切なのは、労働時間の削減や生産コストの低減といった導入効果を分かりやすく示すことだと思います。また、先進事例の紹介や実演などを通じて組合員の理解を深め、時間をかけて丁寧に合意形成を進めていくことも重要だと感じています。

Q3.スマート農業技術の導入後、若手世代の参加など、組合内にどのような変化がありましたか

スマート農業技術を導入したことで、若手組合員や農業経験の浅かった組合員の営農や組合活動への参画意識が高まりました。現在では、データ管理やドローン防除、作業計画の検討などにも積極的に関わってもらっており、組織全体でスマート農業への理解と関心が広がっていると感じています。

一方で、スマート農業技術の導入によって労働時間の削減や作業効率の向上が期待できるものの、草刈作業の省力化など、まだ解決しなければならない課題も残っています。特に、ドローンによる防除作業は早朝に実施する必要があるため、オペレーターの負担が大きいことが課題です。

そこで、オペレーターの負担軽減と作業体制の強化を図るため、認定取得を希望する組合員の育成を進めています。今年度は新たに4名のオペレーターを育成する予定で、より多くの組合員が防除作業に参加できる体制づくりを進めているところです。
また、現在は40代から60代の組合員が中心となって組織運営を担っていますが、ドローン防除などの活動を通じて若手組合員の育成を進めています。今後は、若手・中堅層へ組織運営の役割を計画的に引き継ぐとともに、これまで培ってきた営農技術や経験、ノウハウを次世代へしっかりと伝えていきたいと考えています。

若手組合員の育成・確保を進めながら、将来にわたって安定した営農を続けられる体制を整え、持続可能な組織づくりを進めていきたいと思っています。

写真:若手組合員による直進アシスト田植機での作業の様子

Q4.認定後は、地域への情報発信にも取り組んでいるそうですね。地域に生まれた変化について教えてください

当組合の取組は、県内で初めて計画認定を受けた事例として、ドローンや自動操舵システム、栽培管理システムなどのスマート農業技術を活用した営農だけでなく、それらの技術を通じて組合員の育成や担い手の確保につなげている点にも注目していただきました。また、地元紙をはじめとする各種メディアに取り上げられたことは組合員にとって大きな励みとなり、スマート農業の推進や組合運営への参画意識の向上にもつながっています。

さらに、報道や講演をきっかけに、営農組合や関係機関から視察や意見交換、講演の依頼をいただく機会が増えました。視察や意見交換の場では、「どのように組合内で合意形成を進めたのか」「導入費用に対してどの程度の効果があったのか」といった質問も多くいただいています。こうしたことから、県や関係機関の協力をいただきながら説明会を開催するなど、当組合の取組を広く紹介しており、スマート農業の普及や地域への横展開にもつながっていると感じています。

また、今回の計画認定をきっかけに、地域内でスマート農業への関心が高まり、担い手不足や高齢化への対応策として、スマート農業技術の導入を検討する営農組合も見られるようになりました。当組合の取組は地域のモデル事例として評価していただいており、説明会や視察、情報交換などを通じて関係者同士の連携も深まっています。

今後は、関係機関や近隣営農組合と連携しながら、スマート農業の普及と持続可能な営農体制づくりを進めていきたいと考えています。また、集落営農の継続と発展につながる「砺波モデル」の確立を目指すとともに、当組合で得られた成果やノウハウを積極的に発信し、地域農業の維持・発展に貢献していきたいと考えています。

写真:説明会の様子

Q5.今後、どのような組合を目指していきますか

当組合では、高齢化や人口減少による労働力不足に対応するため、スマート農業技術を活用しながら、省力化と収益性の向上を進め、限られた人員で安定して営農を続けられる体制づくりを目指しています。現在取り組んでいるドローンによる防除や追肥、自動操舵システムの活用をさらに進めるとともに、栽培管理システムや生育・収量などの各種データを活用しながら、収量と品質の向上、コスト削減につなげていきたいと考えています。

スマート農業技術の導入や乾田直播栽培の拡大によって、水稲では年間約400時間の労働時間削減を目指しています。あわせて、50ha規模の経営を維持しながら、水稲作付面積の拡大や単収の向上を図るとともに、可変施肥や適期防除によるコスト削減と生産管理の高度化にも取り組み、省力化と収益性向上の両立を目指しています。

また、当組合では「総務・会計部」「生産部」「機械部」「ドローン部」の4つの専門部を設け、役割を分担しながら組織運営を行っています。今後は、役員の高齢化に対応するため、若手・中堅世代への計画的な世代交代を進めるとともに、人材育成にも力を入れ、一部の組合員に負担が集中しない組織づくりを進めていきたいと考えています。

やはり、一番の課題は組合員の高齢化と担い手不足です。今後も営農を続けていくためには、労働力の確保が重要になると考えています。このため、スマート農業技術を活用した省力化・効率化をさらに進め、栽培管理システムや各種データを活用して栽培技術の見える化を進め、若手や中堅世代への技術やノウハウの継承にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。こうした取組を通じて、将来にわたって安定した営農体制を築いていきたいと思っています。

さらに、将来的には近隣の営農組織との連携を強化し、地域全体で農地や営農を支え合える体制づくりを進めていきたいと考えています。こうした取組を積み重ねながら、地域農業を支える中核的な担い手としての役割を果たし、将来にわたって持続可能な営農体制を築いていきたいと思っています。